近年SNS上で見られる、数年働いた若者たちが次々と「エスケープ」いわゆる仕事を辞めて海外留学し、キャンパスに戻るという動きが、多くの人にとって「ライフスタイルを変える」新たな選択肢となっています。『2023年版中国留学白書』によれば、留学生総数に占める18〜21歳の留学生は17%、25歳以上の留学生はわずか12%です。
この道は本当に成功するのでしょうか?小紅書(中国版SNS)に見られる自由で新しい選択は本物なのでしょうか?私も留学で「人生をリスタート」できるのでしょうか?
周悦はNUESEを通じて就職に成功した最初の留学生の一人です。社会人留学+アラサー独身+日本語力ゼロ+文系女性…NUESEのインタビュー対象者の多くが「留学~就職」を経て日本に定住するのとは異なり、彼女の就活ストーリーは今日の時代において特徴的なものとなっています。
01 エスケープ: 人生は軌道ではなく、荒野である
Q: 来日前の経験を聞かせてください。次の職を決めずに退職、日本語力ゼロ、26歳での留学。どれも困難が多そう な状況ですが、どのように決断したのですか?
私は上海出身で、小学校から就職するまで、ずっと上海を離れたことはありませんでした。大学ではフランス語を専攻し、卒業後は外資系企業でブランドマーケティングの仕事に従事しました。3〜4年安定して働いた後、心の奥底に「エスケープ」の考えが頻繁に浮かび上がりました。
「もしこのまま結婚したら、一生この小さな世界で生きることになるのか?!」
「自分の時間、自分の空間が欲しい!」
一旦この思いが湧き出すと、もう押さえつけることはできず、ますます強くなります。どこにエスケープするかを考え始めました。日本は家から近く安全で、日本の文化が好きです。だから日本へ行くことにしました。2018年末に退職を決め、機関で半年間日本語を学び、日本語能力検定(以下、JLPT)N2レベルに達しました。2019年7月に来日し語学学校へ入学。年末にJLPT N1レベルを取得し、語学学校で1年間学び、2021年4月にMARCHクラスの大学院に入学しました。
各選択のポイントが非常に明確で、実行力があり、まさに「夢が叶えた」のですね。興味深いのは、家庭の教育環境と両親のこの選択に対する態度です。
私たち家族は皆、独立しています。就職してからも実家暮らしですが、家族間の距離感がちょうど良いです。私も母も出張が多く、互いがどの都市にいるかさえ知りません。出張から帰宅しても相手が家にいるかどうかも分かりません。彼らは私を信頼し、尊重し、私に何の要求もありません。私自身のことに関しては、私自身がどうしたいかが最も重要です。
退職を決意したとき、私は将来の具体的で明確な計画はありませんでしたが、自分が何を望んでいないかはっきりしていました。両親からの大きなサポートがあり、制約も多くはありませんでした。中国でも、日本でも、将来他国で働く機会があるとしても、自分が心地よく感じる場所であれば良いと考えています。当初、留学後に日本で就職するつもりではありませんでしたが、このことは両親も良かったと思っています。30歳で未婚かつ未出産の女性ですが、結婚を急かすこともありません。このように、寛容な家庭環境が大きなサポートとなり、自分の意志に従って選択できたと思います。
02 求職:妥協せず、屈せず、無理強いしない
Q: 大学院卒業後、日本で就職すると決めました。実際、あなたの条件は日本の求人市場で優れているとは言えませんでしたが、最終的に好きな仕事を見つけました。同じような状況にある留学生たちへ就職活動の経験をシェアして頂けますか?
2023年卒業(卒業延期)➕文系➕大学院➕女性➕アラサー、出身大学はMarchの中の1つ、JLPTN1レベル、TOEIC 880点以上、母国で約3、4年ブランドマーケティングの職務経験ありでも、東京の留学生の中ではあまり優れた条件ではありませんでした。就職活動初期から、前職の経験を活かして、女の子が好きな化粧品、服、日用品のマーケティングなど日本で同じような仕事に就きたいと考えていました。そして当時、「絶対に大勢に従わない、妥協しない!」と自分に誓いました。
大学院入学前から、就職の情報収集、講義に参加、業界研究をしました。修士1年を終え、その次の学期には日本の食品会社のマーケティング部でのインターンを経験し、インターン終了後には上司から非常に良い評価を受けました。この時点まで、私は自分の計画と進捗に非常に自信がありました。しかし、本当の就職活動が始まると、「無知とは怖い」もので、この業界の競争は非常に激しく、当初の考えが甘かったことに気づきました。
私は倍率の高い企業、外国人を採用しない企業、アラサーを採用しない企業に多くのエネルギーと労力を費やしました。多くの企業に応募した後、慎重に編集したエントリーシートだというのに、書類選考がとても難しいことに気づきました。同時に、ネット上の日本での求人情報を間に受け、「製造業でマーケティングの仕事をしたいと考えるのは正しいのか?」と疑問を持ち始めました。私は留学生が多く働く企業に応募すべきかもしれないし、条件が不利ならば、みんなが応募するIT企業に行ってみるべきかもしれません。そこで、新卒が無理なら、中途の仕事を探そうと考えを変えました。多くの企業に応募しましたが、日本での就業経験がないことから不採用となる企業も多かったです。その頃、新卒も中途も通らず、日本での就職の道が閉ざされたと思いました。
私はよくNUESE(在日中国人のコミュニティ)の求人を見ており、そこに登場するのは優秀な女性ばかりで、特に印象に残ったのは、新卒でベンチャー企業に入社した女の子でした。そして奇妙なことに、ある夜遅く、NUESEが投稿した求人情報を見つけました。日本の化粧品会社、マーケティングの仕事、関連する職務経験があること、私の考えに完璧に合致していました!そのスレッドの下には「最初のチャンスを掴むことが重要だ」というタグがあり、当時就職活動でショックを受けていた私にとって大きな励みとなりました。私はNUESEにメッセージを送り、社長のビビアンさんと面談しました。ビビアンさんは私をその会社へ推薦すると同時に、NUESEの新プロジェクトにインターンとして参加させてくれる機会も提供してくれました。
数回の面接を経て、内定を得ることができました。ビビアンさんは私が対象企業の面接に参加する前に、多くの励ましをくれました。さらに、私の質問に答えるために時間を割いてくれ、私は少しずつ、「妥協しなかったことは、本当に意味がある」と思い始めました!
「03自分を生きる: 自分の意志で一生を生きる」
Q: 現在、入社してから3か月以上経ちましたが、あなたが想像していた日本企業での仕事と何か違いがありますか?中国と日本の仕事環境を比較して、どんな感想がありますか?
今は毎日とても幸せで、やりたいことをやっていますし、同僚もとてもいい人たちです。最大の違いは、基本的に毎日定時に帰れることですね。それと部署の細かな分担、産休がとても長いことです(笑)。
先程お話した会社の制度上、基本的に残業はなく、私が外国人だからではなく、他の人たちも同様です。以前の中国企業はフレックスタイム制で、仕事時間外に多くの雑務を行わなければならなかったのですが、ここではそうではありません。例えば、イベントの準備には多くの隠れた仕事がありますが、それも定められた時間内で行われます。
また、オンオフの境界がはっきりしています。仕事も生活も、暗黙の了解で、仕事が終わったらWeChatに返信する必要はありません(笑)、仕事中も不適切な質問をすることはありません。あと、あまり良くないと思う一点は、おそらく会社によるものかもしれませんが、当社には定められた病気休暇がなく、年次有給休暇の中に含まれているのです。中国国内の場合は年次有給休暇に加えて10日間の病気休暇があります。
仕事内容に関しては、ここ数か月で自分がとても成長していると感じていますし、以前よりも達成感があります。以前私が働いていた外資系企業は本部がスイスにあり、私たちは中国支社として、単に業務を遂行すればよく、その背後にあるものを理解する必要はありませんでした。しかし、日本の中小企業に入ると、プロジェクトと提案は皆で行い、リスクと責任も共有します。私は販売だけでなく企画やマーケティングも担当しているようで、これにより全体的な視点を持つことができ、成長の喜びを身にしみて感じています。
Q: ご自身の留学による軌道修正の経験を参考に、他の方にどのようなアドバイスや感想を共有したいですか?
私は就職活動の経験と日本企業で働く経験の2つの側面から話したいと思いますが、私はおしゃべりなので、話がますます長くなります(笑)
就職活動をする際、まず自己分析が本当に重要だと思います。各人の状況は異なりますし、他の人に有効な方法が自分にとっても有効とは限りません。同じ手法がすべての企業に適用されるわけではないため、初期の頃に苦労して準備したことや学歴など、最終的に多くの企業はそれに興味を示さなかったこともあります。
次に、迷ったら「他人」と多く関わることです。一人で迷うことは簡単ですが、一人で抜け出す方法を見つけるのは難しいです。私が初期に抱えていた疑問の多くは、後期に多くのエージェントと話した後、一瞬でクリアになりました。その他にも、自分自身の要求に順序付けすることを覚えた方がいい。誰もが理想の仕事を見つけたいと思いますが、それは現実的ではありません。最初から自分が割り切れる条件と絶対に譲れない条件を考えておくべきです。さもないと多くの時間とエネルギーを無駄にし、より多くの機会と可能性を逃すことになります。
日本企業で働くことについて、私のように母国での職務経験がある留学生も恐れる必要はありません。多くのスキルは転用可能ですし、時には新しい方法を見つける必要はなく、過渡期には得意な部分を活かす方が良いでしょう。また就職したばかりの友人は日本の新人制度に不平があるのですが、「日本人がこのように言うのは裏の意味があるのでは」と悩んでいます。メンタルが良くないとき、仕事も順調に進みません、私は日本人が何かほのめかしているのか悩まないようにしています。はっきり言わない以上、私は言葉通りに理解することにしています(笑)
最後に、皆さんを激励の言葉を送りたいと思います。外国人が日本で生活し学び仕事をすることは、それだけでとてもとてもすごいことなのです。以前観た『ビッグバン★セオリー』の一節でしたが、インド人男性が”You will never know how smart I’m in my mother’s language!”と言っていました。これは本当です!
NUESEよりメッセージ
周悦とのおしゃべりはとても楽しく、90年代生まれの活気をしっかり感じました。 面接の際に恥をかいたことはありますか? 彼女は言います:“自分が悪いと感じることはありません。むしろ、相手の見る目がないのです。” 将来の計画はありますか? 彼女は言います:“計画はありません。前を見て、後ろは振り返りません。” 自分の両親を思いやることはありますか? 彼女は言います:“心の中で気にかけていますが、皆、自分の生活を優先しています。”
彼女は自分を委縮させず、妥協せず、ワガママな性格だと笑って言います。 寛容な家庭教育が、自由で束縛されない性格の基盤を築いたと言えます。 日本も彼女が世界を探索する最終目的地ではありません。 退職して留学し、アラサーでの就職活動はどんな人に適しているでしょうか? 私は周悦のようなエネルギッシュで実行力のある人こそ適していると思います!