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中国の「顔面偏差値経済」とは?急成長する健康美容市場

颜值(顔面偏差値)とは

中国のネット流行用語となっている「颜值(顔面偏差値)」。
颜值(顔面偏差値)とは、その人の美しさの価値を表すもので、人の容姿を評価する意味で使われます。
当初中国国内では、颜值(顔面偏差値)はアイドルグループの話題を話す際に使われていました。
その後、中国国内のバラエティでも使われるようになり、ネットの力で若い世代を中心に流行語となったのです。

中国で颜值(顔面偏差値)が流行用語となっている背景

中国国内の大学生2063名を対象に、容姿に対するコンプレックスの調査を行ったところ、59.03%が容姿に何かしらのコンプレックスがあることがわかりました。


その中で、深刻な容姿へのコンプレックスを抱えている割合は、女子が3.94%、男子が9.09%と女子より男子の方が高いことがわかりました。
中度のコンプレックスを抱えている割合は、男子が37.14%で女子の方が59.67%と多い結果です。
華南師範大学心理学院の准教授であるチー・ユカイ(迟毓凯)氏は、女性は男性よりも容姿に対してのコンプレックスを抱えやすく、特に20代の若者は外見の悩みを持っていることが多いと言っています。

若者が容姿にコンプレックスを持つ原因
多くの大学生が容姿にコンプレックスを持つ原因は、3つあります。
美しいと第一印象が良い
就職活動を控えている大学生にとって他のライバルと条件が同じであれば、容姿が良い方が有利となります。
SNSの発展
ソーシャルメディアが発達した現代、いつでもどこでも世界の美男美女を画像や動画で見ることができるようになりました。毎日のように容姿の美しい人たちを見ていると、無意識に世の中の多くは美男美女で、自分はなんて劣っているんだという気持ちになります。
医療美容の発展
医療技術の発展に伴い、中国でも医療美容が急速に伸びています。
その宣伝広告に、「自分の容姿は努力で変えられる」という言葉があり、容姿が悪い人はお金も努力もしていない怠け者だというイメージがついてしまいました。
このようなマーケティング用語は、若い世代の容姿へのコンプレックスを誘発する確率を高めているのです。

顔面偏差値がもたらす経済活動

以前の中国では、女性はメイクをせずに写真の美顔加工を使い、美しさを表現していました。
しかし、現代の若者の美に対する要求がどんどん高くなっており、「顔面偏差値経済」が急速に伸びています。
特に伸びている分野はこちらです。

メンズコスメ市場
「顔面偏差値」の時代は、スキンケアやメイクはもはや女性だけのものではなくなり、男性も見た目の美しさを楽しむようになりました。
中国TikTokの調査によると、2020年9月現在、男性のスキンケア製品への注目度は前年度より58%増加し、女性は28%の上昇。この数字から、外見を気にする男性が増えていることがわかります。
そのため、海外ブランドの資生堂やロレアル、中国国内ブランドもメンズスキンケアやメンズコスメに力を入れています。
中国のメンズスキンケアのマーケット規模は、2013年で104.41億元でした。2018年には144.85億元と成長率138%、2023年までには200億元を突破すると予測されています。

美容整形市場
中国国民の生活水準の向上と企業の「顔面偏差値」をメインとした広告により、美容整形の市場も急成長しています。

引用:中国医美市场趋势洞察报告


このグラフより、2015年から中国の医療美容市場が右肩上がりで伸びていることがわかります。
2015年は医療美容の市場規模は64.8億元でしたが、2019年には176.9億元と28.7%の成長率で増加しています。2020年以降も着実にマーケット規模は伸びており、2023年には311.5億円の規模になると予測されています。

引用:中国医美市场趋势洞察报告


男女や年齢などの詳細を見ていくと、女性が医療美容を行う比率が多く、中国の北部より南部の方が利用割合が高くなっています。主な施術内容はサーマクール、シミ取りレーザーなどのアンチエイジングが多い傾向です。
消費者は以前まで、韓国や日本に行き医療美容を受けることが多かったのですが、2020年の新型コロナウィルスにより、中国国内での医療美容マーケットの需要が拡大。
消費者の美しくなりたいという欲望と健康へのマーケット需要も上昇しているので、今後中国の医療美容マーケットは長期的に発展していくでしょう。


矯正歯科やホワイトニング
第一印象で相手を判断する中で、顔が整っているのに歯並びが悪いという印象を持った経験のある方も多いのではないでしょうか。歯並びの良さは、第一印象に影響を及ぼす大事なパーツの一つです。
中国は欧米諸国に比べて、歯の矯正をする人の割合が低く、30%ほどとなっています。
しかし、SNSやマーケットの発展とともに、多くの人が矯正歯科の重要性を理解してきています。
矯正にはワイヤーとマウスピースがありますが、見た目を優先する人が増えてきているため、マウスピース矯正の需要が伸びています。また、歯のホワイトニングマーケットも右肩上がりで伸びており、2014のマーケット規模は38.7億元でしたが、2018年には61.7億元。2023年には106.3億元の規模に成長すると推測されています。

ジムなどのフィットネス
2021年、中国は世界で最もフィットネス人口が多い国となりました。
その年の中国のフィットネス市場は7,866億円の規模になり、2026年には1兆元を超える規模になると予想しており、まだまだ普及の余地があります。
インターネットの普及や2020年の新型コロナウイルスによるロックダウンの影響で、オンラインフィットネスの市場も将来のフィットネス市場の原動力になると予想されています。

2022年健身行业市场现状分析 线上健身方兴未艾

2015年から2021年にかけて、オンラインとオフラインのフィットネス市場は、ともに右肩上がりで伸びています。中国のオンラインフィットネス市場は主に、オンラインサービスの利便性や自宅で手ごろにできるエクササイズを提案してくれるジムのメンバーシップとなっていることなどがあります。
さまざまなオンラインチャネルを通じて、今後若い世代を中心にさらに拡大していくことが予測されます。

顔面偏差値の闇?

「顔面偏差値」は経済の発展を後押しし、非常に良い影響を与えています。
しかし、それとは反対に悪い影響ももたらし、格差や精神的な面で目を背けることのできない問題となってます。

容姿がもたらす格差社会
以前と比べて、人種差別や性差別は徐々になくなっていますが、「顔面偏差値経済」の突入により、人を見た目で判断する傾向は以前と比べてより強くなっています。
アメリカの労働経済学者のダニエル・S・ハマーメッシュ教授は、容姿の差がどれほどの経済格差をもたらしているのかを調査しました。
教授は人の容姿を5段階に分けた(5が最高、3が平均)。研究結果(計7500人調査)では男性の場合、見た目の印象がいい「5と4」の人は、容姿が平均より劣る「2と1」に比べ、年収が17%上回ったというのである。女性の場合も、12%高いことがわかった。顔、服装、髪形などの見た目が、より印象のいいほうが稼ぎはいい。これは「ビューティ・プレミアム」と呼ばれる。

企業の面接官は、採用者の仕事における実力だけではなく、容姿の良さも一つの能力であるとし、採用の際に見た目も非常に重視しています。
そのため、容姿の良い人は有利になりやすく、見た目による経済格差が生じやすくなっています。

外見の不安によるセルフコンフィデンスの欠如
「顔面偏差値経済」は、容姿があまり良くない人たちの不安感を煽り、セルフコンフィデンスの欠如を招いています。
特に思春期の男女は人の目を気にする年代で、SNS上で美しい男女が自撮り写真を投稿しているのを見て自分自身と比べてしまいます。
そして、何か悪いことが起きると自分の性格や行動の欠点ではなく、見た目の悪さに重点を置き考えてしまう傾向にあります。

違法医療美容施設による施術
先にも述べましたが、「顔面偏差値経済」は医療美容市場の規模の拡大にも貢献しています。
しかし、その中で医療美容の許可がなくサービスを提供している悪質な施設や虚偽広告を出しているところも多く出てきました。
エレベーターや公共バスのネット広告上に「韓国の専門医師」がいると謳い、実際はネットから適当に取ってきた写真を使い、消費者を引きつけるように宣伝している整形病院もありました。
多くの消費者は、この虚偽の広告を疑わず信じてしまっているので、取り返しのつかない結果が相次いで報告されています。
また、医療美容の正規営業許可を取っていない場所では、衛生面がしっかり管理されておらず、施術後に感染症にかかったり、国から認可の降りていない薬剤を使用して施術をしているところもあります。

「顔面偏差値経済」で医療美容の需要が高まっている中、今後中国国内で医療美容制度は厳密に規制され、標準化される必要があります。

まとめ

生活水準が向上し、外見の美しさに男女ともこぞってお金をかける時代になった中国。
その「顔面偏差値経済」は医療美容やメンズコスメなどの産業を発展させ、今後もその勢いは止まらないと予測されます。
見た目を気にすることはとても良いことですが、企業の過度な広告やSNSは人々のセルフコンフィデンスを失わせることにも少なからず影響しています。
過度な美の追求は疲労や不安を産むことにもつながります。
今後美しさにも多様性がある社会になるよう中国国内の人たちは、視野を広くすることも課題でしょう。

引用元:近六成大学生有容貌焦虑
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Chika Kagami

Chika Kagami

SheChina編集長

SheChina編集長。
20年ほどの日中間での職歴、海外情報収集力と市場創造力を活かし念願の今のリアル中国を伝えるメディアを設立。 日本化粧品のiapetusでは、「断黒」という造語を作り、2021年中国美容用語のトレンド入りさせた。 趣味:旅行/ゴルフ/中国

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