日本国内のアルコール消費の停滞と減少に伴い、日本の種類のグローバル化が進んでいます。
中国では、日本のウイスキーや日本酒が大変人気で、中でも「獺祭」やサントリーウイスキー「響」などが有名です。10年前までは簡単に買えた「響」や「山崎」は今となっては幻のお酒となりました。
今回の記事では、なぜ中国国内で人気な日本産のお酒がここまで人気なのか、そして中国人は高値で購入したウイスキーを飲んでいるのか?現在の中国の酒税についてもお話ししていきます。
日本の酒税の現状
中国の酒税をご紹介する前に、まず日本の酒税の現状をご紹介していきます。
日本でお酒は生活必需品ではなく嗜好品に当たるため、消費税に加え、酒税を課す二重課税方式です。
こちらの表は、お酒の税率の割合を表しています。
こちらの表から見てわかるように、日本ではそれぞれのお酒にかかる酒税の割合が異なっています。
特に高いのがビールで、酒税と消費税を合わせると約50%が税金であることがわかります。
ワインなどの果実酒は、17.5%となっています。
ちなみに、ワインの本場であるイタリアやフランスなどのワイン生産地は、ワインの酒税は0です。
羨ましい限りですね。日本のウイスキーの酒税は約14%で、本場イギリスに比べると酒税が安く、イギリスは日本の4倍の酒税がウイスキーに課せられます。さらにイギリスの消費税が2.5倍なので、他の先進国と比べるとお酒によって税率が高いものと安いもので幅があることがわかります。
日本の酒税の歴史は室町時代から始まっていると言われており、古くから国を支える貴重な財源です。
しかし、ビールなど日頃手軽に飲めるお酒の酒税が日本では高いため、若者のアルコール離れが進んでいます。
また2020年と2026年に段階的な酒税の改正法により、酎ハイなどの発泡酒の酒税も上がります。
そのため若者の更なるアルコール離れを防ぐために企業側は、日本酒とリキュールを合わせた飲みやすい日本酒のカクテルを開発するなど試行錯誤しているのです。
中国での輸入酒類にかかる関税
さて、お隣の中国の酒税の現状です。
輸入関税が、ウイスキー5%、酒税に値する増値税と言われる税13%、消費税20%です。
日本と比べると中国のビールにかかる税は低く、ウイスキーや果実酒などは同じくらいになっています。
同じウイスキーでも日本の一般売価の1.7倍くらいで販売されている感覚です。
そして、免税店で購入する高級なウイスキーの場合、一般売価から消費税などがなくなるので、中国売価の半額くらいで購入ができる感覚になります。
なので、訪日中国人のお土産として、在日中国人バイヤーにウイスキーなどが大人気なことがわかります。
世界20カ国ある会員制ウイスキークラブの場合
スコットランドで設立された『ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ』(以下SMWS)は会員制の世界最古のウイスキークラブです。現在は、世界20カ国・会員約35,000人で同じウイスキーを楽しむ会員制クラブです。
同じ樽から生まれるウイスキーを同じタイミングで世界中の会員と楽しむ事ができる会員制ならではのシステムでです。
しかし、同じウイスキーを会員で楽しむ事が目的のクラブですが、日本支社と中国支社では同じウイスキーでも金額の差が大きく出ます。それはウイスキーの輸入関税の違いになってきます。
中国に比べて輸入ウイスキーの関税が少ない日本は、世界20カ国にあるSMWSの中でも比較的安価でウイスキーを楽しむことができます。
世界的に日本のウイスキーが大人気
日本のウイスキーは「ジャパニーズウイスキー」と呼ばれ、スコットランド・アイルランド・アメリカ・カナダについで、世界の5大ウイスキーとしても有名です。
日本のウイスキーが世界的に人気を集めるきっかけとなったのは、イギリスのウイスキー専門誌で主宰されたWW(ワールド・ウイスキー・アワード)で、日本のウイスキーが毎年首位を独占したことがきっかけとなりました。
技術や品質・生産量など、あらゆる点で評価が高く、世界中でファンが多くいます。
中国での日本のウイスキーの人気状況は?
中国でも日本のウイスキーは大人気です!
上海などの都市部では、所得の上昇とともにワインやウイスキーなどの洋酒が人気となっています。
ウイスキーを飲むこと、ウイスキーの蘊蓄を語れることがステータスとなっている傾向があります。
なぜ中国人が日本産のお酒を爆買いするのか
なぜ、中国人は日本のウイスキーを初めとしたお酒を大量に購入するのでしょう。
投機目的として
中国人は商売や資産を増やすこと・ものに関して、とても敏感です。
そのため、日本のお酒を投資目的で購入している人がほとんどです。
特に日本のウイスキーである「山崎」や「白州」「響」などは、中国の投資家からも評判が高く、定価の2倍以上の値段をつけているものもあります。
レッドブック(小红书)で見つけた白州の12年の価格ですが、定価が11,000円なのに対し、中国では1本2,310元(約43,976円)で販売されていました。※1元=19.04元 2023年3月25日時点
2011年から2021年のAmazonで販売した日本のウイスキーの価格ですが、5倍以上値上がりしているものがほとんどです。
山崎は8.46倍、響は5.19倍、宮城峡は6.12倍と、10年で値上がりしています。
特に製造一時停止している年代のウイスキーが人気で、投資としてホールドする人がどんどん増えることが見込まれます。
希少価値がある
こちらも投資商品と関連しますが、日本酒や日本のウイスキーはものによっては大量生産していないものが多く、希少性が高くなっています。
その上、世界で行われる酒蔵コンテストで賞を獲得するなど実力もあるので、中国人からはもちろん世界からも注目されています。
中国で行われる酒の転売に関する実態
中国では投機目的で購入されることが多い日本のお酒ですが、転売目的で購入する人も多いのが現状です。
転売の方法は、2020年の新型コロナウイルス以前であれば、代購と呼ばれる個人の転売屋が来日し商品を購入し、中国で転売するケースがほとんどでした。
その際、従来では都心の商業施設で目当ての商品を購入していました。
最近では、日本の田舎の方にある酒店や商品在庫を抱えている飲食店に目星をつけて商品を購入するそうです。
そのような場所では、若者も少ないので需要も低く、在庫が多くあるからです。
その購入した商品を、中国企業に販売して利益を出しています。
やはり転売でも人気なのが、日本のウイスキー「山崎」や「響」など、プレミアがついているものは、中国国内で6倍以上の値がつき、売買されます。
金とウイスキーは同じもの
2022年12月の中国政府によるゼロコロナ政策の緩和により、中国国内から脱出する人も増えています。
それに伴い、転売目的で日本へ商品購入に訪れる中国人が今後増えるでしょう。
彼らにとって、ウイスキーは飲んで楽しむものではなく、投資そして資産になりつつあります。
日本は酒税が比較的高いのと若者の人口減少が原因で、アルコール離れが進み、お酒の需要が横ばい・または低下してきているなか、年々上がっていく日本ウイスキー人気。
中国でも日本のお酒ブームがウイスキーを始めとし加熱している今、このチャンスを利用して、日本国内でも新たにウイスキー蒸溜所や、ウイスキーを資産として販売する金融商品も人気が出ています。
冷蔵環境が必要な日本酒と比べ、常温で保存や輸送ができるウイスキー人気は、インバウンド景気の回復とともに、さらに伸びていくでしょう。