在日華人のコミュニティを運営するNUESEでは、幅広いテーマのセミナーやイベントを実施しています。
去る11月11日には中国人留学生向けの就職セミナーを実施し、彼女たちとの交流の中知ったのは、筆者が学生時代に知り合った中国人留学生と最近の学生の生活は大きく様変わりしているという事実。
今回の記事では、筆者が独自の視点で彼女たちへのインタビューを決行し、その実態に迫りたいと思います!
留学も大学院進学も当たり前!中国の厳しすぎる内部競争
Q:まず、率直に「なぜ日本に留学しよう」と思ったのですか?
舒舒:中国には「内巻」という言葉があるんですが、日本語では「内部競争」という訳になります。これは中国国内での競争が激化している様子を表していて、例えばより好条件の大学や就職の機会を勝ち取るために、学歴競争が激しくなっていたり、就職してからも、就業条件の競い合いがあったり・・・または、子どもの教育への投資での競い合いであったり、より好条件、より上を目指すという風潮から起こる中国の「内巻」が大きな社会現象になっています。
そんな背景があるために、私たち学生もいわゆる大手企業や公務員といった「いい仕事」に就くためには、海外留学や大学院への進学が当然という雰囲気の中で過ごしてきました。その流れの中では海外留学に行くというのが自然な流れだったんです。
欧米への留学ももちろん人気なのですが、日本は中国からの近いし、何より治安がいいところが魅力でした。もちろん日本のアニメやドラマといった日本文化が好きだったことも後押しになりました。
私たち、日本のここが好き!
Q:実際に日本に暮らしてみて、いかがでしたか?
舒舒:思った通り、日本は気候的にも過ごしやすいし、物価も高くなくて、住み心地がとてもいいと感じています。特に気に入っているのは日本のコンビニ!どこにでもあって、商品も魅力的。日本は本当に便利だな、と思いますね。
ただ、日本での礼儀はやっぱり難しくて。例えば、日本では常に立場上の「上下」があるし、それをわきまえないと失礼と見られるので、日本語の表現に気をつけたり、コミュニケーションにおいては日々が勉強だと思っています。
CHOCO:身だしなみについてもマナーが求められる面が多いと感じるのですが、例えば中国であればパジャマで近所まで出かけることに抵抗はありませんでしたが、日本だと結構目立ちますよね(笑) せめてトップスだけは着替えて出ようかな、という習慣に変わりました。
デート代は親が出して当然? 知らなかった中国留学生のお財布事情
Q:日本での生活費はどうしているの?
YiJun:私が以前、周りの友人から聞きいて統計をとった感じでは、仕送りの平均は18〜20万円くらい(家賃含む)が多いようです。彼女がいる男子であればもっともらってるかも。現代の中国人社会では、デート代も親が負担するのが当然と思う家庭も多いので、そういう子は25万円くらいはもらってるんじゃないかな?
Q:そんなにお金があったらバイトやインターンは不要なのでは?
舒舒:私たちがバイトするのは、お金のためではありません。日本社会に溶け込みたいという気持ちからです。
日本語があまりできない頃はコンビニバイトから始まって、徐々にカフェの店員、言葉がもっと上達した今では企業インターンにも挑戦できるようになりました。もちろん生活費のためにバイトをする留学生もいますが、私たちのように、バイトやインターンは社会勉強の一環ととらえる人の方が多いと思います。
匿名回答 : 私は毎月50万円のお小遣いをもらっていますが、今では日本の新入社員の手取りで生活することを想定して、その金額でできる生活に頑張って適応しようとしています。今のバイトの時給が1000円ほどで、このお金がたった一回のランチ代として消えていくたびに心が痛くなります。以前より「お金を大事にしよう」という意識が持てるようになったと思います。
YiJun:ちなみに中国国内で大学生がバイトをする機会は基本的にないんです。なぜなら、バイトをすれば家にお金がないと思われるので、親がメンツのために「させない」ことの方が多いから。もちろん地域による差もあるし、家庭の経済状況にもよりますが、こういう考えも根強いのが中国社会だと言えますね。
やっぱり日本が大好き!留学生が日本での就職を目指すワケ
Q: 今回の就職セミナーではどんな意見がありましたか?
CHOCO:私たちもそうなのですが、就職は日本がいいと思っています。実は、私は高校時代にカナダ留学を経験したのですが、一年の大部分が雪に覆われて寒いですし、学校で習った英語は現地で全く役に立たず、当時カルチャーショックが大きかったこともあり、欧米の国に根をおろすという考えは湧きませんでした。
また、他のイベント参加者の中には、高校はスペイン、高校はイギリス、大学院はオランダという国際派の留学生がいましたが、こんなに海外のバックグラウンドがあるにも関わらず就職は日本がいいと言っていました。
理由はやはり、日本の住み心地のよさに尽きると思います。日本の気候、便利さ、また人の優しさ・寛容性といったことで安心した暮らしが送れいるので、多くの中国人留学生たちがこの環境に身を置きたいという気持ちを持っているんじゃないでしょうか。
舒舒:最初にも話した通り、中国は内部競争が激しいので就職してからもずっと競争にさらされるし、加えて景気の影響もあり、中国国内では就職難も懸念されます。日本は就労環境が良く、例えば残業代もきちんと支払われる、福利厚生といった制度が充実しているという安心感があります。そういう安定を求める気持ちから日本での就職を望みました。おかげさまでは日本企業への内定をいただくことができ、来年からは東京のIT企業で働く予定です。
YiJun:私はこれから日本で大学院へ進むこともあり、就職は日本か中国は未定です。中国にいる家族や親族から中国へ戻ってきたら?と言われることもあり、まだわかりません。もちろん日本での就職ではビジネスレベルの日本語が必要なので、どちらの道も選べるよう、インターンなどの機会を活用してさらにレベルアップしていきたいと思っています。
留学生を通して知る中国の今
筆者が中国へ留学したのは約15年前-その頃見た中国の様子や、知り合った現地の学生たち、そして日本で暮らす中国人留学生とは大きく様変わりした現代の若者たちから中国の経済発展のスピードを改めて感じるとともに、それに伴う競争社会と中国人たちの向上心に驚かされるばかりとなった今回のインタビューでした。
現在、日本の多くの企業が人手不足の課題を抱える中、彼女たちもまた「金の卵」。一層の成長をして、日本と中国の架け橋になる存在として活躍してくれることでしょう。これからも彼女たちの成長から目が離せない筆者なのでした。