10月1日は中国の建国記念日にあたる国慶節です。今年の国慶節は9月29日から始まった中秋節と、10月1日からの国慶節とで祝日が連続していて、8日間の大型連休となっています。また「ゼロコロナ政策」終了以降、日本旅行が解禁されてから初めてとなる国慶節。本記事ではその実際をレポートしていきます。
中国人の購買を大きく左右するオンライン情報
中国においてECとライブコマースが重要な購買ツールとなって久しいですが、オンライン購買において常につきものなのが「炎上」の問題です。
最近では、中国No. 1セールスを誇ると言われたKOLの李佳琪が、ライブ中に視聴者から「商品の値段が高すぎる」と批判されたことに対し、
「ずっとこの値段だよ、どこが高いの? なぜ高いと思うかを自分で考えて。長年給料が上がってないのは真面目に仕事をしてないからじゃないか」
と強めのコメントをしたことから大炎上。
この態度に多くの視聴者は反感を持ち、批判が殺到する事態となりました。あまりに多くの批判が殺到したことを受け、李氏は翌日の晩、ライブ配信で涙を流しながら謝罪。しかしながら結果としてたくさんのフォロワーが彼から離れる結果となったのです。この一件を通じて、中国における「炎上」の恐ろしさを痛感した人がいかに多かったかは言うまでもありません。
それと同時に筆者が思い出すのは、やはり福島第一原発事故の一件です。
この件については、かねてより中国市民も敏感な反応を見せており、関連する報道が出されるたび日本製品の不買運動が起こるなど、常に緊張感のある状態が続いてきました。特に、今年の国慶節は8月から始まった処理水の放出から間もない時期ということもあり、国慶節商戦やインバウンド市場においての影響がどの程度あるのか懸念されてきたのです。
処理水放出後でも、人気の海外旅行先1位は日本
中国政府は新型コロナの感染拡大で、旅行目的の海外渡航を制限してきましたが、ゼロコロナ政策の終了に伴い、今年1月には、原則禁止してきた個人の海外旅行を再開。8月10日には日本行きの団体旅行を解禁しており、「ゼロコロナ政策」が終了してから初の国慶節となる今回の連休は、中国交通運輸省によるとのべ20億5000万人が移動すると見込まれています。
一方、懸念されていた処理水放出の影響があったのも事実で、8月に旅行業界の関係者からは一部の顧客が旅行をキャンセルし始めたとの情報も入ってきました。しかしながら中国当局が発表した海外団体旅行リストでは旅行地検索ワードの第1位は日本だったそう。
実際は在上海日本総領事館によると、観光ビザの申請は緩やかな増加傾向。団体客はキャンセルが相次いだものの、個人客が多数訪れると見込まれており、処理水の影響は限定的と見られます。
これらの要素を鑑みれば、今回の国慶節で日本に来る中国人は処理水やコロナにも影響されない「真の日本好き」とも言える層。彼らはこの国慶節中にどんな行動をするのか、その姿に迫ってみましょう。
国慶節商戦、銀座に溢れる中国人旅行客
筆者が国慶節直前に訪れた銀座では、すでに聞こえてくるのは中国語ばかり!街で見かける大部分の人が中華圏からの観光客で、円安を追い風に売れ行きが好調な高級ブランド店の前には、入店を待つ人々で長蛇の列が作られていました。また、中国でも大人気の日本の化粧品メーカーMIKIMOTO COSMETICS 銀座店を覗いてみると、来店客のほとんどを中国人旅行客が占める状況でした。
MIKIMOTO COSMETICS 銀座店
さらにコロナの影響を受け中国人の健康意識が高まったことから、腸内環境を整え、免疫力アップが期待される医薬品、健康食品の売れ行きがひときわ好調です。
コロナ後に見える訪日中国人のペルソナ、理性的爆買い
今回見えてきた購買傾向で顕著だったのが、無闇に爆買いをする人が明らかに減ったということ。背景にはSNSの影響が強く、旅行者も「本当に効果があるか、価値があるか」を見極めながら購買することが可能になったことが挙げられます。現に、店舗ではスマートフォンで情報収集しながら商品を厳選する人の様子が見られ、またその結果「確信を持った商品のみを大量購入する」理性的爆買いという傾向が見られるようになったことも特徴。実際、知人の中国人は今回の日本旅行で口紅だけを50本近く購入したと言い、以前の爆買いとは明らかに傾向が変わってきていることが見て取れます。
以上のように、インバウンド市場を取り巻く要素には円安、処理水問題、健康意識といった要素がキーワードになってくることが予想されます。また、目が肥えた観光客を真に満足させる商品やサービスは何か、引き続き市場をウォッチしていく必要があります。日中両面でのマーケティング、プロモーションを行なっているNUESEの強みを活かし、今後も独自のマーケット情報をお届けしていきます!