今回のテーマは、日本の不動産市場で注目されている動向についてです。在日中国人の間で不動産への関心が高まっており、ソーシャルメディアや教育機関での情報収集が活発化しています。同時に、不動産仲介業界も中国市場へのアプローチを強化しており、SNSを活用した集客やマーケティングが増加しています。今回は日本在住という地の利を活かした不動産ビジネスの実態について、その背景と、今後の動きについてレポートしていきたいと思います。
訪日ブームからの変遷:日本不動産への中国人投資の増加
2010年代の訪日ブームをきっかけに、中国人が日本の不動産に目を向け始め、日本国内の物件に投資する中国人が増えています。
中国のSNS「小紅書」上には、日本の不動産についての動画も数多く配信されており、「日本买房注意事项(日本でこんな部屋は買っちゃダメ!)」などの動画が高評価を得ており、日本の不動産への関心の高さがうかがえる。
日本不動産への注目理由:中国人投資家の視点
そもそも、なぜ中国人が日本の不動産に注目しているのか?以下4点が挙げられます。
・地政学的リスクの低さ
中国から海外への資金移転の手段として、地政学的リスクの低い日本で不動産を取得するケースがあります。
・不動産価値の高さ
中国では不動産を取得しても土地使用権があるのみで、所有権は認められておらず、日本の不動産の土地所有権が取得できるところが魅力となっています。
また、優良な建設会社が多いので建物の価値が保証されていること。そして、管理会社がトラブル発生時にすぐに駆けつけてくれるなど、対応が手厚いところも人気のポイントとなっています。
・日本の治安の良さ
・法制度の整備が進んでいること
不動産取得について法整備が進んでいることから、本人の意思で自由に売買でき、外国人でも不動産取得がしや水と言われています。
不動産取得の壁を乗り越える:中国人投資家と日本の不動産業界の新たな動き
実際のところ、日本に住んでいない中国人が日本で不動産を取得するのは簡単ではありません。
日本語でのやりとりや、地理的な知識、そして、日本における不動産取得に関する専門的な知識が必要とされるからです。
そこで、中国語で日本の習慣や不動産取得に関する情報を紹介できる仲介業者のニーズが高まっており、大きなビジネスチャンスが生まれているのです。
中でも不動産に関する専門的な知識や経験が豊富である在日中国人が、日本の不動産業界で築いた基盤をいかして本国の中国人へのアプローチを強めています。
また、日本人の中にも、海外からの富裕層向け高価格物件を販売するべく「小紅書」などを通して積極的に中国人投資家と繋がりを持とうとしている不動産関係者も増えています。
それらの中には、動画の配信だけにとどまらず、情報交換の場としてメッセージアプリ上でグループチャットを作ったり、不動産購入に関する勉強会をオフラインで開催したりといった直接顧客と繋がるサービスを展開するなど、中国人をはじめとする外国人の物件探しをより細やかにサポートする仲介業者も現れています。
異文化への適応:日本人と中国人の違いに着目した戦略が必須
日本人と中国人では好む物件が異なります。日本人はスーパーや学校が近くにあるかといった住みやすさを重視することが多いのに対し、中国人は利便性の良さや賃貸に出す際の価格、物件の将来性など物件の価値を見ることが多いのです。中国人向けに不動産仲介をするにはそのニーズを理解することが大前提となります。
今後、中国向けの顧客をターゲットにする不動産ビジネスにおいては、これらのニーズの違いを把握することはもちろん、実住後のトラブルへの対応など、単なる売買以上のサービスを提供できることが望まれるでしょう。加熱する中国人向け不動産ビジネスの今後の動向に引き続き注目です。